樹状細胞療法

樹状細胞療法は体外で単球から樹状細胞(Dendritic Cell ; DC)を誘導し、がんの目印を提示させ、それを体内に戻すことにより、体内でがんの目印に反応する細胞障害性T細胞(CTL)を誘導し抗腫瘍効果を期待する治療法です。
CTLは認識する目印(腫瘍抗原)は極めて限定されており、僅かでも目印が異なるがんは殺傷することができません。そのため、確実に体内のがんに発現されている目印を用いることがとても重要となります。CTLの腫瘍を識別する目印はNK細胞と異なることから、NK療法との併用による相加・相乗効果が期待できます。

樹状細胞は免疫細胞の一つで、体内に侵入したバクテリアなどの異物(専門的には非自己と言います)を食べて処理すると共に、その一部を細胞表面に掲げてT細胞に情報を伝える役割を持っています。情報を受け取ったT細胞はその敵を攻撃する専門部隊を組織し、敵であると認識するものを体内から完全に排除するまで働きます。

T細胞への情報伝達は抗原提示と呼ばれます。樹状細胞は非常に高い抗原提示能を持っていることから、プロッフェッショナル抗原提示細胞(APC)とも言われます。
樹状細胞はほとんどの免疫応答において初動を担うと共に、引き続き起きる免疫応答への橋渡しを行っており、免疫全体から見ると要の細胞と位置付けられています。

また、樹状細胞はインターロイキンIL-12やIL-15などの様々な抗腫瘍免疫を高めるサイトカインを産生します。IL-12やIL-15は直接的にNK細胞やCTLなどのキラー細胞を増殖・活性化させるだけではなく、1型ヘルパーT細胞(Th1)を誘導し、増殖・活性化させることでTh1によるキラーT細胞の活性化も促します。

抗腫瘍作用機序

体外で誘導・成熟化及び抗原を提示された樹状細胞は体内に投与されると、まずリンパ節へ移動します(図①)。
リンパ節内では抗原提示やサイトカインを産生することで抗原特異的CTLの増殖・活性化やTh1の誘導、増殖・活性化を行います(図②,③)。
誘導された抗原特異的CTLはリンパ節を離れて腫瘍のある部位へ移動し、そこで腫瘍細胞を殺傷します(図④)。
樹状細胞による抗腫瘍機序はNK療法やアルファ・ベータT細胞療法と異なり、樹状細胞自身が直接腫瘍を破壊するのではなく、CTLを中心とするキラー細胞達を増殖・活性化することで発揮されます。

腫瘍抗原について

樹状細胞療法に用いられる腫瘍抗原は自己の腫瘍組織や人工的に合成されたペプチドが使われます。当クリニックではこのどちらの方法でも治療することが可能です。

自己腫瘍を用いる方法
手術にて摘出した腫瘍組織があり、かつ凍結で保管されている場合に適用できます。 自己の腫瘍から腫瘍細胞を単離し、特殊な処理を施して増殖できない状態にしてから樹状細胞と混合培養して、自己腫瘍抗原を提示した樹状細胞を作製し、体内に戻す方法です。 将来的に手術の予定があり、腫瘍組織の提供が可能な場合にも適用できます。 尚、樹状細胞の作製には一定量の腫瘍細胞が必要となることから、提供された腫瘍組織の量によっては1クールの治療ができない場合もあります。
人工ペプチドを用いる方法
自己腫瘍組織が入手できない場合、人工的に合成された色々な腫瘍抗原の断片(ペプチド)を用います。自己腫瘍の場合と同じ方法で人工ペプチドを提示した樹状細胞を作製し、体内に戻します。人工ペプチドを用いる場合には、HLA-A0201またはHLA-A2402の二つの特定のHLA型の方しか対象となりません。さらに、特定の腫瘍抗原が陽性となる場合に適用となります。 腫瘍細胞は分裂に伴い様々な遺伝子レベルの変異が付加されます。それにより腫瘍抗原の喪失や変異をきたした腫瘍細胞も出現してきます。このようなケースでは別の腫瘍抗原に由来する人工ペプチドや複数の人工ペプチドを用いる治療を行います。

副作用・リスク

稀に発熱と悪寒及びそれに伴う震えや注射部位が一時的に赤くなったり熱を持ったりすることがあります。個人差はありますが、通常1~2日程度で軽快します。その他、成分採血の際に口の周りや手足のしびれなどが起こることがあります。既往にリウマチ、膠原病等、自己免疫疾患のある場合は、病状の悪化をきたす恐れがあります。現在、間質性肺炎を患っている場合は、治療できないことがあります。

本治療について

本治療は、医薬品医療機器等法における未承認医薬品等に該当しますが、再生医療等の安全性の確保等に関する法律により治療の実施及び製剤の製造が承認されております。
クリニック内において、ご本人の血液から免疫細胞製剤を製造いたします。

治療の流れ

相談(初診)

患者様やご家族のご相談をしっかりお聞きし、詳しい治療内容やスケジュールなどをご説明いたします。(随時開催の相談会にお申込みください)十分なご理解をいただき、ご同意を得た上で治療に入ることになります。(初診)

検査

患者様やご家族のご相談をしっかりお聞きし、詳しい治療内容やスケジュールなどを
ご説明いたします。(随時開催の相談会にお申込みください)
十分なご理解をいただき、ご同意を得た上で治療に入ることになります。(初診)

治療期間

採血

各検査の結果より、適用可否を判定します。HLA-A0201もしくはHLA-A2402であり、かつ特定の腫瘍抗原が検出された場合に採血を行います。採血は大量に白血球を採取する必要があるため、アフェレーシス採血(成分採血)を行います。採血時間はおよそ2~3時間程度かかります。

培養

アフェレーシス血から単核球を取り出し、未熟樹状細胞を誘導します。その後、自己腫瘍細胞あるいは人工ペプチドをパルスしてから成熟した樹状細胞を作製します。

投与

樹状細胞は局所注射により、腫瘍に近いリンパ節近傍の皮下もしくは皮内に投与します。また、当クリニックでは治療効果を高めるため、NK療法との併用を行っています。
※ 樹状細胞療法のみの治療も可能です。

治療スケジュール

  • 採血
  • DC
  • NK

5週間 計4回(DC2回、NK2回)投与

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